「これじゃ入国はムリだ」
パスポートを突き返して、不敵な笑みを浮かべる係官。
それが、シリアで交わされた最初の挨拶でした。

KLMオランダ航空でアムステルダムを経由、日本を出発して19時間後に到着したダマスカス国際空港。30分以上待たされてこんな応対をされたって、怒ってはいけません。文庫本に挟んであった日本語の名刺を係官に差し出して、「これでいいか?」と言うと、あっさり許可が下りました。
ビザなしで入国できる国がだいぶ増えた中で、この大げさなビザスタンプ(笑)。パスポートを眺めてみても、シリアまで行ってきたぞ、という存在感があります。
確か旅をしたのはイラク戦争の前の年で、中東情勢が風雲急を告げつつあった頃。シリア、ヨルダンはイラクの隣国なので、“もしも”のことがあったらどこへ逃げるのが安全か、出発前に調べた記憶があります。
マスコミのせいで、シリアを含めた中東の国々は危険地域と思われがち。でも、そんなことはないんです。シリアは警察国家ということもあって治安はすごく良い。人も紳士的。旅の途中には、愛すべきシリア人たちに何度も助けられました。
この地域で出会う旅人は、トルコ、シリア、ヨルダン、エジプトと、4カ国を行き来する人が多い。中でもシリアの人の良さは皆さん激賞で、ヨルダン、エジプトと南下するにしたがって堕落していく、というのが定評です。エジプト人なんか、ムスリムのくせに豚肉を食う奴もいる、とある旅人から耳にしました。ほんとかどうか分かりませんが(笑)。
前に
記事にしたアレッポ石鹸発祥の町、アレッポもシリアにあります。何しろ、ダマスカスとともに4000年の歴史がある町。世界最大級のスーク(市場)なんか、いかにもクラシカルで風情があります。
「アレッポ」とか「ダマスカス」とかいう響きが、旅人にはたまらないですよね。
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