力なくもがきながら、自らの血の中に断末魔の呻き声をあげる生け贄の山羊。
鋭いナイフを持った男が、その山羊の喉をかき切る。
哀れな山羊の呻きは、やがて荒野の宴の声の中に消えていく。
遊牧民の村を訪ねた日、ちょうどそこでは結婚式が行われていた。
茫漠たる荒野の村にやってきた美しい花嫁。
普段は山羊を追いながら、つつましい暮らしを送る村を包んだ華やかな空気。
空に向かって祝砲が打ち上げられ、祝いの踊りはいつまでもつづく。
いつになく浮き立った雰囲気に、子供たちも元気に辺りを駆け回る。
1年後にここへ来たら、きっと赤ちゃんが産まれているはずだよ、
と、僕をこの村へ連れてきた友人が笑う。
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