銀座に映画を観に行くつもりが、夜に急用が入った日曜日。昼の時間を持てあまして、家にある150本近い映画ライブラリーの中から、久しぶりに観てみることにしました。今回のセレクトは『マレーナ』。有名な『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』の、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品です。
この作品、僕はもちろん劇場公開時に有楽町で鑑賞済みです。もう5年も前ですが、今まで観た中で何といっても一番泣けた作品。そして一番記憶に残る作品です。
シチリア島のある美しい街を舞台に、12歳の少年レナートの切ない恋を描いた物語。戦争に突入する時代の波に否応なく翻弄される美しい女性マレーナと、彼女を一途に想い続ける少年。話しかけることもできず、姿を追うことしかできないレナートは、それでも、男たちの視線と女達の嫉妬を一身に集めるマレーナを必死に守ろうとします。やがて戦争は激しさを増し、マレーナとレナートもその渦に巻き込まれて…。
ジュゼッペ・トルナトーレは、故郷への記憶とそれへの思いを撮らせたら右に出る者はない映画監督です。たぶんこの作品も、監督自身の大切な記憶を作品にしたものでしょう。少年の頃の想い出話を、まるで、彼が観る者1人1人に語りかけているようです。
最近『嫌われ松子の一生』という作品が劇場公開中ですが、「松子」はすべての女性の中にいると、僕のお気に入り『カリスマ映画論』の睦月さんが
秀逸なレビューを書いています。
すべてとは言えないけれど、世の男性の多くは、大切な「マレーナ」の記憶を胸にしまっています。映画『マレーナ』が、多くの人の涙を誘うのは、そんな訳だからだと思うのです。
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