僕がアラビア旅行をしたときは、ちょうどイラク戦争の前年でした。「セプテンバー・イレブン」の翌年の、2002年9月。当時はアメリカがいつイラクに攻め込むか、という話題が出始めた頃で、早ければ9〜10月、遅くても翌年2〜3月との観測でした。万が一戦争が起きた場合、どんなルートでアラビア地域を離れるか、なんてことまで調べて出かけた記憶があります。
現地に着いて空港を出たら自由、というけれど、初めてひとり旅で海外に出かけた時は、これ以上の不自由はないと思ったものです。その不自由を味わうために旅をする、というふうに、だんだん変わっていくのだけど。
各地の安宿には情報ノートがあって、自由旅行をする各国の旅人が、旅の情報を書き込んでいます。ノートには、バスや鉄道の発着状況や国境での注意、どこの宿ではモノがよく盗まれる、あそこの角の食堂はうまい、○○トラベルはぼったくりだ、という類の、ガイドブックにはない貴重な情報が満載。ひとり旅では、こんな生きた情報がすごく役にたつんですね。
ヨルダンのアンマンで泊まった安宿では、国境を越えてイスラエルに行くために情報収集に来る旅人が多くいました。この安宿、イラクでの日本人拉致事件が起きた時も、拉致被害者がアンマン滞在中に泊まっていたというので、ニュースにも登場しています。
アラビアは、比較的英語の通じない地域で、空港やホテル、大きな観光スポットくらいしか話せる人はいなかったように思います。それでも、一定の宿泊施設と、一定の交通機関と、一定の治安さえ確保されていれば、旅は楽しむことができる。地名は現地語なので、例えば「ダマスカス」を連呼すれば、その辺の立ン坊が寄ってきてダマスカス行きのバスを指さしてくれます。
その立ン坊が嘘つきで、後でよそ行きのバスだと気付いても、それを楽しむくらいの余裕を持ちましょう(笑)。素晴らしい孤独を味わうために、旅に出るのだから。
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