洞窟の闇の中から参詣者を呼び止める布袋様。
愛嬌のある風体に誘われて、思わずそばへ近寄ってみる。
金峰山浄智寺は、鎌倉五山第四位の格式のある寺。
ひっそりとして深い樹木におおわれる、古都鎌倉の風情を今に残す名刹だ。
布袋様は、その昔中国に実在した不思議な人物。
僧のようでもあり、仙人のようでもあり、弥勒の化身のようでもあるという。
けれど、大きな袋を背負って処処を泊まり歩いていた、
と聞くと、なんだ、自分と同じ旅好きな叔父さんじゃないかと思ってしまう。
「そうかもしれんのぉ」
自慢の太鼓腹を丸出しにして、いにしえの旅人が目の前で笑う。
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