2004.06.28 Monday
「ほんとにきれいな海でしょ。風が吹く度に色が変わりますよ。」島の案内を買って出てくれた名瀬市市民福祉部長の佐々木さんが、穏やかな表情でこう言った。三月もいまだ中旬だというのに、すでに初夏のものとも感じられるような陽射しを受けて、脚下に展開するびょうぼう渺茫たる海がきらきらと輝いている。水平線の向こうには、霞の中にしんきろう蜃気楼のように浮かぶ喜界島の影。桜はとうに終わったというから、島はこれから梅雨を経て夏に向かう。
南の島に降り立った時の心持ちというのは、他ではちょっと味わえないものだ。視線の先の障害物といえば、潮風にゆらめ揺曳くサトウキビ畑と島に特有の瓦屋根くらいで、大小のビルに視界を妨げられて遠い景色を眺めることの少ない都会人には、いかにも開放感がある。頭上に広がる蒼い空に、太陽の恵みを受けた山々の深緑は頗る配合が良い。海岸沿いの道を行けば、ハイビスカスの花が時折派手やかな真紅の顔を覗かせる。東京から飛行機でたった二時間のフライトの後で、車窓を巡るみずみず瑞々しい光景を目の当たりにすると、普段の鬱々たる日々を脱して一種蘇生の感がある。大都会は開化した沙漠だと誰やらが言ったが、南の島に来てみると改めてその思いを強くせずにはいられない。
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