数々の伝説を持つボサノヴァの神様、ジョアン・ジルベルトの来日公演が、東京国際フォーラムでひらかれました。
今回で３回目の来日となったジョアンは、すでに７５歳。１９５８年に「シェガ・ジ・サウダージ」（邦題「想いあふれて」）で、ボサノヴァを世に送り出した、まさにボサノヴァの生みの親ともいうべきアーティストです。
同時代に生きて、その歌声を生で３回も聴けたのはこの上ないも幸せ、というほかありません。
彼の来日を心待ちにしていたファンは多いはず。名盤『ゲッツ・ジルベルト』を発表して、「イパネマの娘」が大ヒットしたのは１９６３年。ギターとボソボソ呟くような歌声でファンを魅了して５０年になります。
ジョアンはとかく逸話の多い人物。
その奇行ぶりは昨日の東京公演でも発揮されました。
開演時間は７時だったのだけど、その時間に「まだ開演の目途が立ちません」の館内放送。ようやく、７時４０分ころに「ホテルを出発したとの情報」が入った時は、場内から大きな笑い声。嵐のような拍手に迎えられて、ギターを抱えたジョアンがステージに現れたのは、結局、予定を１時間ほど過ぎたころでした。
広いステージの真ん中にぽつんと据えられた椅子に腰をかけ、おもむろにギターを爪弾いて、神様のステージが始まりました。ジョアンのステージには、ギターと、彼の呟くような歌以外は何もありません。
マイクを通して響くギターの声と歌が、微妙に追いかけっこをしながら静寂の中を進んでいく。繊細で、優雅で、神秘に満ちていて、心地よい緊張感にあふれたジョアンの演奏は、約２時間にわたって場内を包みました。
１曲ごとに鳴りやまない拍手。
曲が終わると、時折瞑想状態に入るジョアン。
歌の途中、ギターを弾く手を眼鏡のあたりにやって愛嬌を見せるほど、ステージ上の彼は上機嫌でした。
ここ数年、ジョアンは日本での公演以外、人前で演奏することはないそうです。
よっぽど日本のオーディエンスが気に入ったんだね。
３２曲の、どれもおなじみのボサノヴァのナンバーを歌い終えてステージを去る彼に、スタンディング・オベーションで応えた観客。
昨夜の公演に、ジョアンもきっと満足したことだろうと思います。
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