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その8 森の奥にあったもの(後)

環境省によると、全国の不法投棄または違法な保管状態にある使用済自動車は一六万九千台。うち離島分は二万一千台に上る。しかし、これは表向きの数だ。現行の「廃棄物処理法」では、所有者が「有価物」だと主張した場合、それは「廃棄物」の扱いとはならない。従って、外見上いかにゴミと判定されるような代物(しろもの)でも、「廃棄物処理法」上の「廃棄物」とは限ら
ない。
龍郷町から本茶トンネルを抜けて、名瀬市側の林道を入ったところに積まれた廃車の山などはまさにそれだ。古物商の資格を持つ鳶(とび)業者が使用済み自動車を集めてきては、売れる部品を取り外す。部品を外された廃車はその場に積まれていくわけだが、結果周辺に放置された廃車はすでに数百台になる。鳶業者に言わせれば、それらは「商品」であってゴミではない。であるから、不法投棄と非難される筋合いはない。
従って、現実には、環境省の見解よりもはるかに多い使用済自動車が全国の山野に放置されている。離島の場合、処理費用のほか島外搬出の費用が余分にかかるため、なおさら放置を生みやすい。環境省の試算では、鹿児島県全体で不法投棄または違法な保管状態にある使用済自動車数は五,八三三台。うち離島分は二,五二五台。これに対し、名瀬市の試算では、平成十四年度末の市内放置自動車数は三,三〇〇台を超えるという。「廃棄物処理法」の影に隠れた放置自動車がいかに多いかということだ。

 法制度の不備によって、かかる事態を引き起こしたのは明白であると言わねばならない。近年におけるモータリゼーションの発達とそれに伴う諸問題に対処するため、ついに平成十四年七月「自動車リサイクル法」が国会で成立、平成十七年一月一日から本格施行の運びとなった。同法以後は、使用済自動車はすべて「廃棄物」扱いとなり、山野に自動車を放置すれば、いかに「古物」と主張しても犯罪となる。現在放置されている所有者不明の使用済自動車をいかに撤去するかという問題は依然として残るが、不法投棄車撲滅に向けて確実な一歩を踏み出したと言っていいだろう。法律施行をきっかけにして、奄美の森の一日も早い原状回復を願いたいものだ。
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