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6.世界一の迷宮都市

フェズ

 モロッコにおいて、マラケシュと並んで巨大なメディナを持つのが、北リフ山脈とモワイヤンアトラスに挟まれた地域にある都市、フェズである。中でも城壁に囲まれた旧市街は、通称「フェズ・エル・バリ」と呼ばれて、ユネスコの世界遺産に指定されている。
 そもそもフェズは、モロッコ最初のイスラム王朝・イドリス朝の都として興ったのが始まりだ。以来1000年以上にわたって、モロッコの政治、文化、商業の中心として栄えてきた、日本における京都と同様に地位にある町である。

 世界一の迷宮フェズ・エル・バリを散策するのなら、青と緑の幾何学模様が美しいブー・ジュルード門からスタートするのがいいだろう。安宿とカフェが軒を連ねる一帯を過ぎると、1000年の歴史を重ねた趣のある街並みが、訪れた者を迎えるはずだ。

 起伏に富んだ狭い石畳の往来の雑踏の中を、時折荷車を引いたロバが馳せ違い、道々の商店には、名産の陶器や革製品、スパイスをはじめとするあらゆる品が並んでいる。砂色の高い建物の間を縫うような不規則の通りを歩くうち、旅人は、やがて自らの居場所を見失ってしまう。

 イスラム国の古い町には、必ずスークと呼ばれる市場がある。僕もかつて、イランのイスファハン、シリアのダマスカス、アレッポといった名だたるスークを歩いたことがある。しかしフェズのスークは、そのいずれとも違った趣味があって、いくら歩いても飽きることがない。

 イスラムとアフリカと、地中海を隔てたヨーロッパの文化が融合した焼点としての性質が、フェズ・エル・バリの魅力であろう。
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