06.露天の政治家
2005.05.01 Sunday
倫敦第一の称のあるハイド・パークでは、日曜の午後になると伝統のスピーカーズ・コーナーが賑やかだ。さすがに議会制民主主義発祥の地だけあって、一般市民に到るまでスピーチの機会が与えられるのは、感心と言う外はない。英国首相の条件にスピーチの優秀さが数えられるのは当然で、歴代首相は、ほとんど例外なく演説の名手である。
ハイド・パーク・コーナーの駅を上がって、公園の南側の門をくぐってマーブル・アーチを目指して歩いて行くと、やがて無数の人だかりが見えてくる。露天の政治家が、台に上って口角泡を飛ばして論じる周りを取り囲む聴衆の群れが、あちらでひとかたまり、こちらでひとかたまり。中には、壇上の弁士に反撃しているのもある。申し合わせた訳ではあるまいが、弁士には黒人やアラブ人が多く、人種問題、宗教問題が中心のようだ。傷だらけの上半身を露わにして、汗だくで反戦論を打っているのもあって、一帯は大盛況を醸している。
議論が白熱している割に喧嘩になりそうにないのは、全体に余興的な要素があるからで、弁士もこれで飯の食い上げになる心配がないからだろう。聖書を片手に真面目に論じている弁士の横で、漫才のような奴が笑いを誘っていたりする。あるいはこの余裕が、100年以上このコーナーが続いている理由かも知れない。
公約を反故にするくらいが何だと言って恥じるところのない日本の首相も、ここで1度演説をやって、民主主義の根本を学び直すが良かろうと思った。
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