<< May | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< その1 島の景色 | main | その3 黒い浜(前) >>

その2 南北に長い島嶼群

大島を含む奄美群島が、北緯二八度三二分三〇秒から二七度〇分五三秒にわたる南北に長大な島嶼群であるということを知る日本人は、意外に少ないかもしれない。そういう筆者自身も、今回訪れるまでは島々の正確な位置さえ知らなかったことを、ここに白状する。奄美群島は、大島、喜界島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島、沖永良部島、与論島の有人八島で構成される。現在は鹿児島県に属し、名瀬市の他、十町三村がある。南北二〇〇??以上に及ぶ大島郡は、日本最長の郡でもある。
群島中最大の奄美大島は、離島では佐渡島に次ぐ大きさで、総面積七一二.二一平方キロメートル、周囲の長さは四六一??に及ぶ。飛行機から眼下を見渡すと、海岸線にまで迫る山々の峰が幾重にも重なって、南の島というと蒼い海しか頭になかった筆者のような不心得者には、一種異様の趣がある。後で調べてみたら、それは飛行機から眺めた光景に限ったことではない。実際に島の八五%は山林原野に覆われ、耕地面積は全体のわずか二.七%に過ぎない。従って、冒頭に書いた南の島における開放感云々という景色を見るのは、実は、比較的平地が多い島の北部でのことで、それ以外ではほとんどが亜熱帯の密林の中を走る山道だ。地図で見て数キロの距離が、実際に走ってみたら意外に時間がかかるというのも珍しくはない。

 奄美の気候は亜熱帯海洋性。筆者が訪れた三月は、すでに汗ばむほどの陽気だ。もちろん、南国だけに夏の暑さは格別で、一年の半分は夏日を記録するという。特に奄美の夏といえば必ず俎上に上るのが台風で、昔は酷い目に遭うことも度々であった。とかく災難とは重なるもので、終戦の年の一九四五年九月に襲った台風では、死者六五名、負傷者一八名、全壊半壊合わせた住宅被害は一四,三四八軒という大被害を被った。戦中以来の耐乏生活を余儀なくされてきた島民にとっては、困窮ここに極まれりという状況だったろう。

 敗戦後、八年の米軍支配を経て奄美群島は本土に復帰、以来特別措置法に基づく振興政策によって生活水準は漸次向上し、台風による被害も、各方面のインフラが整備されるにしたがって減少してきた。しかし、物質文明が益々盛んとなりつつある現代にあって、奄美は島であるが故の新たな問題を抱えている。
奄美紀行 | comments (0) | trackbacks (0) admin

Comments

Trackbacks

Trackback URL : http://www.saftyblanket.com/travel/2008/sb.cgi/65