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『オリバー・ツイスト』

「アカデミー賞最有力!」と銘打った作品が次々に(笑)公開されて、映画の話題がにぎやかになってきました。
「最有力」な作品がこんなにあると、どれを観るか迷うくらい。
で、僕はこの前の週末、日比谷スカラ座で上映中の『オリバー・ツイスト』を鑑賞してきました。
『戦場のピアニスト』でオスカーを獲得したロマン・ポランスキー監督作品で、英国の文豪チャールズ・ディケンズの小説を映画化した文芸作品です。
舞台は19世紀のロンドン。
孤児としてロンドンに辿り着いたオリバー少年は、少年スリ団にかくまわれますが、やがて裕福な紳士と出会って幸せをつかむ、といったストーリーです。
あまりに善悪がはっきりしていて、人間の本質を鋭くえぐる、
という類の作品ではありません。
その意味では、アカデミー賞を獲れるような作品ではないかもしれない…。

むしろこの作品の魅力は、80億円をかけて再現した
ビクトリア朝ロンドンの光景でしょう。
ばい煙に霞むセントポールの大ドームを遠くに眺めて、フリート・ストリートの雑踏を現出させた監督の手腕には、素直に感動。
薄暗い路地の雰囲気や、むき出しになった地面をネズミが這い回る様子まで細かく描いています。
60年の後に、夏目漱石が憂鬱な日々を暮らした灰色のロンドンはこんな街だったのか、なんてストーリーと関係のないところに感心してしまいました。

優しさと正直さを失わなかった孤児オリバー君が、裕福な紳士に拾われて幸せになっていく、というのはちょっと出来すぎた話に見えます。
原作者のディケンズは、貧しい少年時代を過ごしたこともあって、労働者階級に同情的な作品を多く残したのだそうです。

ロンドンへ旅した夏、僕はウェストミンスター寺院のポエット・コーナーで、
ディケンズの名を見つけて、ああここに英国一の文豪が眠っているのかと、
月並みの感心をしたものです。

せっかく映画を観たのだから、ディケンズの小説もぜひ読んでみなければ、と思います。
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