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司馬遼太郎『関ヶ原』上・中・下

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年末年始のようなまとまった休みは、大作が読みたくなります。で、今回は、ご存じ司馬遼太郎の歴史小説『関ヶ原』をチョイス。天下分け目の決戦となった大いくさに至る顛末を、歴史絵巻のようなダイナミックさ、緻密さえで描いた名作です。
初めて司馬作品を読んだのはもう6,7年前。『坂の上の雲』を読んだのが始まりでした。これと『竜馬がゆく』がよく知られているので、文学にうとい人には、司馬作品は幕末物と思われてしまう。でも、戦国時代を舞台にした物語も、それ以上に面白い作品が多いんですね。とにかく多作の人なので、機会があるごとに1作ずつ読んでいくのが良いと思います。

さて、今回は『関ヶ原』。これを読むにあたって、注意して眺めた点がありました。それは、

「徳川家康がどんな手口で他の大名を味方に引き込んだか」

ということ。

豊臣氏が支配していた天下を奪うというのは、それはもう大事業。たくさんの人が様々な思いで動いている中を成し遂げるのだから。で、最後の勝利をつかんだ家康は相当わるい奴だ、ということが言えそうです。

『関ヶ原』を読むと、家康は人間という生き物のことを深く理解していた、ということが分かります。石田三成が正義によって人を動かそうとしたのに対し、家康は利によって人を引きつけた。その結果が関ヶ原の勝敗なんですね。

いつも真っ直ぐに正義を主張する三成は敵が多く、人の前に利をぶら下げて立ち回る家康には、多くの人がついて行く。人間とはイヤなものです。けれど家康は、人間がイヤな生き物であることをよく知っていたんだと思います。

何だか、夏彦翁が繰り返しコラムで書いた警句を思い出すようです。

「利をもって誘うがいい」
「正義と聞いたら気をつけよ」

昔も今も、人間はイヤなものだ、ということを忘れるなということですね。
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