<< May 2024 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 縄文の昔から | main | 名前には物語がほしい >>

祇園精舎

img425_file.jpg

子供の絵本って、それはそれはいろんな種類のものがあります。日本のおとぎ話、外国の童話にはじまって、絵本作家のベストセラー、キャラクターものまで。小さい頃に触れた絵本は大人になっても記憶に残ることも多いので、子育てにあたっては、大事にしてあげたい。
日本人に生まれたからには美しい日本語を身につけさせたい。そう思っていたところへ「平家物語」の絵本を見つけて、さっそく買ってきました。何となくおどろおどろしい表紙の絵は、雰囲気抜群。よく見ると、ご存じ齋藤孝先生の編集した本でした。

齋藤さんは、NHK教育の子供向け番組、「にほんごであそぼ」の監修も担当。古典を使って日本語のリズムを楽しく子供に伝えています。やっぱり、英語なんかやるよりも先に自分の国の言葉をちゃんと身につけなきゃ。こういう企画は大いにやってほしい。

さて買ってきた平家物語の絵本。タイトルは『祇園精舎』と、容赦なく漢字で書いてあります。そこまた気に入ったところ。ページをめくると、文章のワンフレーズと絵が見開きになっている。文章にはふりがなが振ってありますが、もちろん漢字はそのまま使っています。

絵を見ると「秦の趙高、漢の王莽、梁の朱い、唐の禄山」はいかにも強欲の人相だし、彼らが「久からずして亡じにし者どもなり。」となるくだりでは、体が骸骨に変身。主役の「平清盛朝臣」なんかもう極悪人で、幼児にはちょっと強烈かもしれません。

おかげで、せっかく僕の小遣いで買ってあげたこの絵本、娘にはすっかり嫌われています(苦笑)。

昔、夏彦翁のコラムに、イソップ童話を改竄するな、という内容のものがありました。日本では、蟻ときりぎりすは最後に仲良くなってしまいますが、本当は、蟻が、冬になって凍えているきりぎりすを冷たく追い出す物語。残酷なようだけど、人間は本来残酷な生き物だ、という真理を分からせることが大事だと、夏彦翁は言うわけですね。

だから、国民的文学である平家物語も、そのまま教えるのは良いことだと思うんです。800年かけて伝えられてきた言葉のリズムと世の中の真理を、体に染み込ませるのが大事。子供のうちは意味なんか分からなくてもいい。大きくなってから「あの恐ろしい絵本はそういうことが書いてあったのか」というのが解れば良いのです。

今は完全に拒否されていますが(笑)、いつか解る日がくるさ、と僕は信じています。
コラム・雑記 | comments (0) | trackbacks (0) admin

Comments